有限会社 日伸貴金属
Coporate Profille
日伸貴金属は1964年(昭和39年)、初代上川宗照が東京都台東区に創業。宗照は「東京銀器」の技法の祖といわれる平田家の9代目、平田宗道に師事しました。一番弟子として鍛金技法などを修行し、独立しました。現在は息子で初代宗照に16歳で師事した2代目宗照の上川一男が社長をつとめています。社員は上川社長の子供(3男1女)を含め5人。一家が同じ工房で仕事をし、江戸時代から伝わる技法を継承しています。上川社長は09年に現代の名工卓越技能賞、東久邇宮文化褒賞を受賞しました。
Story
江戸時代中期にはかんざしやくしなどの装身具を金や銀で加工する銀師(しろがねし)と呼ばれる金工職人がおり、「東京銀器」はこうした職人の流れをくむ金工作家の集団。その基本技法は奈良時代に中国大陸から伝わり、江戸時代に多彩な技術に発展しました。主な技法は銀などの平金を金づちで立体的な器物に打ち出す「鍛金」や、たがねで表面に模様を掘り、凹凸を打ち出したりする「彫金」などがある。現在は一部で機械設備を取り入れるが、金づちや当て金などの道具は自作するなど、手作業による技法を数多く受け継いでいます。
Interview
創業当初は空前のゴルフ人気もありゴルフカップの造形を数多く手がけました。80年代は半導体の製造に使うプラチナ製るつぼなど、伝統技術を工業製品に応用して日本経済の一翼を担いました。90年代後半に仏具ブームが到来し、りん棒で「キーン」という金属音を響かせるおりんの製造に着手。プレス加工メーカーと共同で18金の板から加工する技術を開発し、鍛金などの技法を加えて仕上げる独自技術を確立。金属音が90秒以上続くなどの品質要求を満たしながら、月200個の量産需要に対応しました。
Recommendation
最も力を入れているのがワインカップなどの酒器。銀は光の反射率や熱伝導率が高く、器に注いだ酒の色を鮮やかに映し出すほか、手や唇、舌に飲み物が持つ温度をそのまま伝える。バーテンダーやソムリエに試飲を依頼したところ、ガラス製の器で飲む場合と比べ味が異なるとの回答を得たほか、一部では「ワインのたるの香りまで伝わってくる」など味覚の専門家をうならせる評価も得ています。味覚の数値化や分析を行う研究機関、味香り戦略研究所(横浜市保土ケ谷区)で、金・銀製の器とガラス・樹脂製の器でワインを飲む場合の違いを比較したところ、「酸味度を抑えて飲みやすくなる」との結果です。目に見える造形以外に味覚などの五感にも違いを生み出す製品として訴求するなど、販路開拓に力を入れています。
一方、海外にも目を向けています。中国企業から鉄瓶を銀で造形する依頼を受け、このほど納めた。創業当初に湯沸かしと呼ばれる銀瓶を製造していた経験に、現代的な技法を加えた独自製品で、中国の富裕層向けに需要の開拓が期待できます。時代の要求に合わせ、伝統技法をどのように生かすか、同社の挑戦は続きます。
有限会社 日伸貴金属
Nisshin Kikinzoku
URL: http://www.nisshin-kikinzoku.com/
住所: 東京都台東区三筋1丁目3−13